製品開発ストーリー

第1回:UFB開発ストーリー【前編】

「売る方は良いことしか言わないから、本当かどうか私が立ち会いましょう」

UFB発生装置を取り付け、加工テストを行う際に、取引先の金属加工メーカーの社長から言われた言葉である。
事前にかなりの時間をかけて社内でリハーサルを行っていたので、結果の正否は心配なかったが、この社長の気迫にとても驚いたことを今でもはっきり覚えている。

微細気泡UFBは目にはほとんど見えない。そのため、本当に泡が発生しているか、これがなぜ効くかが分からない、まったくの手探り状態からこの装置開発はスタートした。

背景

元々、この話は社内の技術革新の一環であった。当時のベテラン技術員、花田がバブルを使った加工法に興味を持ち、これを社内で試してみたいことを毛利本部長(現常務)に報告したところ実験を進めるよう指示があった。当社が手掛ける超硬合金ならびにセラミック製品は国内だけでなく海外メーカーの台頭も著しく、事業を拡大していくためには海外メーカーとコスト競争を勝ち抜かなければならなかった。そのためには加工コストを低減するという、タフな技術革新がどうしても必要だったのである。

実は、花田は早くから研削能率向上に効果が期待されているUFBに着目していた。検証を重ねた結果、この技術が切込みを増やしたり、ドレスインターバルを伸ばしたりすることに応用できることを発見したのである。

それから内面研削・平面研削・円筒研削と様々な職場でUFBのテストを繰り返し、何度も行われた。連日のテスト期間が終わりを迎え、いよいよUFB発生装置を取り外すという日、加工担当者たちはとても残念な顔をしていた。それくらい、従来では加工が困難だった硬質材料が、嘘のように、何の苦も無く加工できたからである。この様子を見た毛利は、「これだけ効果があるなら、国内の加工メーカーや同業他社が本装置を導入して、より競争力を高めることで、海外からの脅威に対抗できるのではないか」と考え、商品化に踏み切ることにした。

まず手始めに、30台のデモ機の製作が上層部に提案された。事業を不安視する意見もあるなか協議を重ね、加工能率アップ、コストダウンを推進する新商品開発についにGOサインが出たのである。そこで、子会社でプロトタイプを製作。次に自社・協力会社からのフィードバックを元に設計変更を重ね、いよいよ販売を開始した。

ウルトラファインバブルクーラントシステム
ウルトラファインバブルクーラントシステム
※写真は2017年9月時点の仕様

発売後の反響

商品は新聞にも掲載されたことから、技術者からとても注目を集めた。それに併せてデモ機の無料貸出も開始した。しかし「なぜ加工能率が向上するのか?」という問いには、明確に答えることが出来ず、普及の障壁となってしまった。金型メーカーの社長と大手企業とでは、求めるものが違っていたのである。

印象に残るエピソードを紹介したい。あるお客様から「当社のような自動車メーカーは、期間工の人達が毎朝会社に来て加工機のスタートボタンを押すのだが、UFB装置が壊れていても、それには気が付かず、従来より工具に負荷のかかるスピードで不良品をつくることにならないかが、とても心配である」。金型メーカー社長は、効果を感じたら自分で購入の決定を行う一方で、大手企業ではメカニズムが重視されるということを知り、このままではすんなりとUFBが受け入れられないことがわかったのであった。

後編では、UFBのメカニズムをいかに解明していくか…、その奮闘ストーリーです。